2009年03月14日

さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」

さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」


春の嵐のふきあれる夜。



米原駅、3月13日金曜日、午後11時52分。



寝台特急「富士/はやぶさ」の紺碧の車体は、闇夜へすい込まれるように走り去っていきました。



何度カメラのレンズをぬぐっても、なぜだかその白いラインがかすんで見えます。

名残を惜しむ人々の涙雨だったのかもしれません。



ダイヤ改正のため、今日3月14日、東京と九州を結ぶ寝台特急「富士/はやぶさ」は、その役目を終えることになります。



それを知ってる鉄ちゃんのみなさん、時刻が近づくにつれて、続々と2番線ホームへ集まってきました。
もちろん、私もその一人です(笑)

さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」
さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」


カメラに三脚や脚立もスタンバイ。
さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」


警備員さんもスタンバイ♪(お疲れさまです!)
さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」



待機している乗務員さん。
あれ?なんでホームの向こう側に?

さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」


じつは、米原駅での停車は時刻表には乗っていません。
が、JR東海から西日本へと乗務員さんが交替するため、2分間ほど停車するのです。
それで、在来線の一番端にある2番線のさらに奥にある線路に列車は入ってくるんですね。



いよいよ近づいてきました!カメラを構える人の列にも緊張感が走ります~!

さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」




あ、きた!

さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」


ものすごいフラッシュの中、「富士/はやぶさ」がスルスル~と入線!
さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」



笑顔で交替する乗務員さんたち。

さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」


美しいヘッドマーク、スマートな車体だぁ♪
さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」
さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」



客の乗り降りが無いので、発車の合図も鳴りません。


乗務員交替を終えた「富士/はやぶさ」は、
午後11時52分、ゆっくりと車輪が動き出し、
徐々にスピードをあげた流線型のしなやかな車体は、雨の米原駅を離れたちまち西の闇の中へ。

さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」
さよなら!ブルートレイン「富士/はやぶさ」



ブルートレインの愛称で親しまれた寝台特急がスターダムにのしあがったのは、1970年代。
この「富士/はやぶさ」はその筆頭でした。
途中からルートが短縮され熊本行きとなってしまいましたが、
当初は、「はやぶさ」は鹿児島本線経由、「富士」は日豊本線経由で、ともに西鹿児島駅までのルートで運行されていたんです。


「はやぶさ」には、本当によく乗りました。
母の実家が鹿児島にあるため、小さい頃の夏休みには、東京から鹿児島へ、このブルートレインに乗って行ったんです。


これがまた、指定券を取るのが至難のワザ!
もちろんまだインターネットなんて無い時代です。
特に夏休みやお盆の帰省のためとなると、1ヶ月前の前日の夜から切符を取るために駅のみどりの窓口に並んでいる人もたくさんいました。


東京駅を発車した列車は、夕闇せまる丸の内や新橋のオフィス街をゆっくりスピードをあげながら通り抜け、東海道本線をひた走ります。


さぁ、これから長い長い一夜の旅のはじまり♪
窓に顔がくっつかんばかりにして、流れる景色に嵩じる人、
サキイカをつまみに缶ビールやカップ酒をちょびちょびっとはじめる人、
乗る前に買っておいた駅弁をひろげる人、
買い忘れたお土産がわりにと、車内販売で横浜名物・崎陽軒のシューマイや、静岡の安倍川餅やわさび漬を買い求める人、
トランプをはじめる人(ファミコンの流行る前です!)、
ちょっと早めの就寝にそなえて、洗面室で顔を洗う人、
もちろん駅弁をひろげる人も、etc


既にセットされている寝台車の車窓から眺める空は、薄紫、夕焼けの茜色へと刻々と移ろっていき、
やがて漆黒へと変わっていく頃には、高層ビル群や工場は途切れ、屋根の密集した住宅街を抜け、やがて遠くに山なみ、線路沿いにも田んぼやお茶畑がひろがってきます。



車内は消灯されてアナウンスもなくなり、レールを走る車輪の音だけが響いてくるころ、列車は関西へ。
ひっとっこ一人いなくなったホームで、灯りだけがまばゆく光っています。
駅って、明るいんだなぁ。



「今度こそ、夜もずっと寝ないで、停まる駅をぜんぶ数えながら見よう!」


そう決意したのもどこへやら。
枕が替わると寝られない、ということはまったく無いワタクシ(笑)、
ガタンゴトンの音と軽い揺れはまるで子守歌のように、まぶたを閉じさせてくれます。


ハッと気がついて、あわてて窓のカーテンの隙間から外をのぞくと、
列車はすでに中国地方の広ーい田園地帯。
あちゃ~シマッタ^^;


でも、関門海峡トンネルだけは、毎回しっかり起きて待機!
入口と出口が見たいがためでしたが、
「すごいよなぁ、海の中にこんなトンネルを作っちゃうんだもんなぁ。」
子ども心にも、日本の鉄道の技術の凄さはわかり、なんだか誇らしげに感じたものです。


門司から九州にさしかかる頃に、朝食。
もちろん列車食堂です!
当時は、外食すること自体が子どもにとっては「ハレの日」、
まして寝台特急の車内食堂とくれば、もう、朝からどんだけテンションあがりまくることか!
分厚い白いクロスがかけられたテーブルには、ピカピカに磨かれた食器やグラスがセットされ、
いっちょうらのワンピースを着た私は、まるで豪華ホテルのレストランでお忍び休暇を楽しむ「王女様」のような気分でした♪



鹿児島の海のすぐそばにある親戚の家で過ごす夏休みは、よっぽどわたしに合っていたんでしょう。
最初は家族揃って、次は姉と二人ででかけましたが、
小学校高学年になると一人だけで、この「はやぶさ」に乗っての旅は続きました。


中学高校になると、部活動や友達とのほうが多くなって止みましたが、
一度だけ高校生になって、行ったことがあります。
従兄の友達の男の子といい感じになり、帰る日に西鹿児島駅まで見送りに来てもらったっけなー
淡~い、夏の日の思い出です♪


でもその後は、とんとご無沙汰。
ちょうど昨年のこの同じ時期、大阪と東京をむすぶ夜間急行「銀河」が廃止されるときにも、この米原駅にラストランを見送りに来ました。
それから1年。
なんとかもう一度、この「はやぶさ」に乗ってみたかったけど、ついに叶わず。


いっぽうで乗らなくてよかったのかも、とも思ったり。
全盛時を知るわたしには、今乗ったら、その老朽化が痛々しく思えてしまったかもしれないから。。
よく思い出は美化されると言いますが、失うとわかってはじめてその偉大さに気がつくこと、よくあるんですよね。。。
私の中のカッコイイ「はやぶさ」は、ワクワクドキドキしながら乗った、あの夏休みのアルバムに綴じておきましょう。



時代の流れ、そして人の気持ちとは、ときに無情なものです。
あんなに大好きだったのに、一度離れてしまうと見向きもしなくなってしまって、なんとも身勝手と思われているだろうなぁ。
廃止を惜しむくらいなら、もっと利用すればよかったのに、と悔やんでも後の祭り。
やっぱりスピードや利便性や効率優先の世の中の流れには、人々も、そして「富士/はやぶさ」自身も逆らえなかったのでしょうか。。。
でも、効率だけで物事を判断していいのかな。
いつか、私達はこのツケの代償を払うことになる、
そのとき、失ってみてはじめてその「時を経る」ことの重みや大きさに感服し、
そしてそれらをアッサリと切り捨ててきたことに、後悔することになるんじゃないのかな。。
そんな気もしています。



ともあれ、「富士」「はやぶさ」、長い間ほんとうにお疲れさまでした。
そして、ありがとう!



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この記事へのコメント
僕もね一回だけ小学1年の時、鹿児島に家族旅行行った時に乗ったんですよ。
今は家族がバラバラになって縁も切れて母親しか知らんけど(^_^;)
最初で最後の旅でしたわ〜。今思い出してんけど、姉と兄がおってん(^^)
懐かしいわ〜
Posted by 八丈島のキョン at 2009年03月14日 09:52
寒い中ご苦労様でしたね

僕は帰省というのがほとんどなかったのでチョット羨ましかったです。

学生時代に周遊券で九州を二週間旅行した時にでも(立ち席特急券扱い)で乗っておけばヨカッタなぁ(T_T)。

そういえばJR西日本の普通な急行も無くなったんですね(T_T)。
Posted by キモト at 2009年03月14日 12:30
八丈島のキョンさん
子どもの頃の家族旅行って、ものすごく記憶に残っているものですよね。何をしたかとか詳しい内容は覚えてないんだけど、誰とどこへ行ったか、というのだけは鮮明に覚えてるの。きっとそのお姉さんやお兄さんも、どこかでこのニュースを知って、キョンさんとの旅行を懐かしく思い出していらっしゃるかもね^^鉄道の旅の思い出は、時空を越える気がします♪
Posted by ケイミー at 2009年03月14日 13:09
キモトさん
ありがとう!じっとしてると寒いけど、ホームはひとめ見ようという人の熱気で沸きかえっていました^^
しかし、旅好きキモトさんでも乗ったことが無かったとは、当分プチ優越感に浸れるわ(笑)そう、周遊券なんてのもありましたね!2週間も旅出来るのは学生ならでは。え、普通急行も?青春18きっぷの旅がますますしにくくなりそう(>_<)
Posted by ケイミー at 2009年03月14日 13:25
九州内では立席特急券で寝台に乗れる区間がありましたので、博多まで行くときに、たまに乗っていました。当時は小倉を出たら博多までノンストップ(「あさかぜ」の晩年は黒崎に停車していた)だったけど、最近では「はやぶさ」「富士」は普通列車にも道を譲ってしまう有様だったようです。
東京行きの最終日は、ダイヤが乱れて90分遅れで到着したようです。普段なら品川で打ち切る事もあるようですけど、東京までゴールさせたのは、輝かしい歴史に幕を下ろさせようとした配慮もあるようです。本当にお疲れ様でした…
Posted by 赤いかもめ at 2009年03月14日 14:52
ケイミー様、ご無沙汰しております、つつぴ~です。

米原駅での詳細なリポート、本当に有難うございました。
一度乗りたかった『富士/はやぶさ』。夢叶わぬまま終わってしまいました。
せめてもの悪あがき。
夢の中で乗る事にします。
Posted by つつぴ~。 at 2009年03月14日 22:04
詳細レポ、ありがとうございます(*^^*)

俺も、乗った事がない皆さんと同じく『一度は…』と思いながら、結局叶わぬ夢のまま、廃止になってしまいましたが、この記事を読んで、自分も乗った気分になれました(*^^*)

寒い中、お疲れ様でしたm(__)m

しばらくは、何度かこの記事を読み返しに来ると思います(^^)
Posted by はるりんパパ at 2009年03月14日 22:21
赤いかもめさん
本当にいろんな思い出がよみがえってきますよね〜
しかし90分遅れとは、待ってる方々も大変だったろうなぁ。。でも、なんとか東京までゴール出来てよかった!
Posted by ケイミー at 2009年03月14日 23:46
つつぴ〜さん
こんにちは、こちらこそご無沙汰してます!つつぴ〜さんも鉄ちゃんでしたか!喜んでいただけて嬉しいです^^夢で、好きなだけたくさん乗っちゃってくださいね♪
Posted by ケイミー at 2009年03月14日 23:49
はるりんパパさん
どういたしまして(笑)パパさんは、札幌までトワイライトエクスプレスに乗ってレポしてくれたじゃないですかぁ^^寂しくはなったけど、いつかトワイライトに乗るのを夢見て頑張ります♪
Posted by ケイミー at 2009年03月14日 23:56
ケイミーさま

こんにちは。
滋賀咲くのコモリと申します。

雨の中のお見送り、
お疲れ様でした。

それぞれ、思い入れがあるのだなぁ~と、
つい感傷に浸ってしまいました。

これも時代の流れ、仕方ないでしょう。
飛行機や新幹線に慣れてしまうと、
もうブルトレには乗れません。

思い出は思い出として
大切にしたいと思います。

次は「きたぐに」?「日本海」?・・・涙
Posted by コモリ@滋賀サク at 2009年03月15日 19:52
はじめまして!

白うさぎと申します。
と、いってもしょっちゅうお耳にかかっていますが…(^-^)

ケイミーさんは「鉄子」なんですね~。
これは知りませんでした。
ケイミーさんのブルートレインに対する思い入れがすっごく伝わってきますね~。

子供の頃から「ブルートレイン」という言葉には特別な響きがあったように思います。
私も一度でいいから乗ってみたかったですね。
チビうさ1号に、新聞の記事を切り抜いてくれとせがまれました。保育園に持って行って友達に見せるそうです(^v^)

私もJoshinでついBトレインショーティーの「さよならはやぶさ6両セット」を買ってしまいました(^v^)v

私が思い入れがあるのは、急行「きたぐに」ですね。
近日中にブログにアップしますので、またのぞきに来て下さい。
Posted by 白うさぎ at 2009年03月15日 23:36
こんばんは。
やっぱりケイミーさんも来られてたんですねー。

もしかして白い上着、紺(黒?)のズボン、肩にマフラーをかけてましたか?
割と早い時間から来てた女性がいらしたので、もしかしたらケイミーさんなのかなーと思いつつ、人違いだったらイヤなのでお声は掛けずにやり過ごしましたが・・・。全く違ってたらゴメンナサイ。

それにしても撮り鉄ちゃん達のド迫力、イメージがちょっと変わってしまいました。
Posted by chibachan at 2009年03月16日 00:00
コモリ@滋賀サクさん
こんにちは、コメントありがとうございます!時代の流れ。。スピードと効率優先のビジネスには確かに合わないかもしれないですね。。でも、ゆっくりと旅を楽しむ気持ちと時間のゆとりが持てるようになったら、いつかまた復活してほしいなあと願ってます。「きたぐに」が無くなったら、湖北住まいには辛いー!
Posted by ケイミー at 2009年03月17日 08:31
白うさぎさん
こちらこそはじめまして、コメントありがとう!そうなんです、「新幹線」は技術の粋を集めたカッコよさ、「ブルートレイン」は華麗で優雅な旅、それぞれ違った憧れがありました♪チビうさ1号ちゃん、いかがだったかな?急行「きたぐに」、いいですね〜楽しみに拝見させていただきますね!
Posted by ケイミー at 2009年03月17日 08:41
chibachanさん
こんにちは!chibachanさんも行かれていたんですね!はい、まさにその白いジャケット・黒のズボン・マフラーの女性が私でした(笑)本当にたくさんの人でビックリ〜撮り鉄さんの件、同感です。いろいろいらっしゃるようで…私の周りはみんな気のいい方々ばかりで、お互いにゆずりゆずられながら撮りましたからよかったですけど(;^_^
Posted by ケイミー at 2009年03月17日 08:50
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